とよじのなが~いつきあい

八尾市民大学講座情報や今日の言葉を書いてます

6/17 『ips細胞の未来』のあらすじ

 昨年9月12日、理化学研究所発生・再生科学総合研究センターと先端医療振興財団・先端医療センター病院において、世界ではじめてのiPS細胞由来細胞をヒトへと移植する手術が行われました。2006年にマウスで、2007年にヒトで樹立されたiPS細胞は長足の進歩を遂げ、10年も経過しないうちに臨床研究の段階へと入っています。

 iPS細胞研究は、身体の失われた組織や機能を回復する「再生医療」の観点から注目されることが多いのですが、一方で体内のアクセスしづらい組織や不可逆性の変性疾患など、これまで発症機構などが研究しづらかった疾患についても、薬を作るための研究のツールとして利用できるなど、その可能性の多様性も忘れることはできません。

 これまでiPS細胞研究はヒト胚を壊して作られるES細胞研究の持つ倫理的問題を解決する存在として紹介されることが多かったのですが、上記の様にさまざまな応用が期待される状況になると、やはり倫理的・法的・社会的課題(ELSI)とよばれる問題について指摘されることが多くなりました。まず、これまでに行われてきた再生医療以外の先端医療においても指摘されてきたさまざま問題であり、患者・被験者の権利・身体をどのようにして保護するのか、という問題です。これは一日も早い再生医療の実現化のためには早急に検討されなければならない問題といえます。また、新しい治療法への期待を利用して、科学的な根拠の乏しい行為がおこなわれるなどのケースも増えてきました。

 本講座では、iPS細胞を中心に、再生医療の研究はどこまで進んでいるのか、将来どのようなことができるようになるのか、危険性はないのかなど、新しい医療を考えるために大切なことをご紹介しながら、再生医療が実現化する社会がどうなっていくかを考えていく一助としたいと思います。